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先週の説教より

「離散し仮住まいしている人々」 ペトロの手紙(一)1章1-2節(9/4説教)

 1節後半に「ポントス、ガラテヤ、カパドキア、アジア、ビティニアの各地に離散して仮住まいをしている選ばれた人たち」とあります。小アジア、現在のトルコに住むキリスト信者たちのことです。これらの地域にペトロは伝道のために一度も足を踏み入れたことがありません。恐らくペンテコステ(聖霊降臨日)の時以来、無名の人々によってこれらの地域に福音が伝えられ、主を信じる者たちの群れ(教会)が形成されたのです。ペトロはそれらの人々に宛てて初代教会を代表する人間として手紙を書いているのです。 

 「離散して仮住まいをしている人々」と言われています。「離散している」とはディアスポラ(離散の民)と言い、もともとパレスチナの外に「離散している」ユダヤ人を指す言葉です。それをペトロはキリストを信じる人々に対して使っているのです。「仮住まいする」とは、天上のキリストに望みを置きながら、地上の生活を「仮住まい」と見なして生きるキリスト信者たちのことです。

 信仰者についてこのように語る背景にはペトロ自身の経験があったのではないでしょうか。ペトロはかつて主イエスによって「わたしに従って来なさい」と招かれた時、直ちに網を捨て、家族を捨て、今までの生活のすべてを捨てて主の弟子になりました。その時ペトロは主イエスのことをまだ本当にはよく分かっていなかったのですが、この御方に従うことは人間として正しいこと、真理であると直観的に信じたのです。そしてそのことを主イエスの十字架と復活の出来事を通していよいよ確信したのです。その思いから、ペトロはすべての信仰者はこの世に「離散し仮住まいしている選ばれた人々」であると言うのです。その人々にペトロは手紙を書いているのです。

牧師 柏木英雄